我が校の「生徒会長」に絶大な権力が委ねられていると知ったのは、
当の役職に僕が任命されてからのことだった。
部活動の練習場所や予算配分に至るまで、決定権はなんと僕の手にあるらしい。
生徒の自主性を重んじてか、はたまた生徒が信頼されている証拠なのか……。
人一倍真面目なのが取り柄とはいえ、僕も生徒の一人。
ここまでの権限を任されている以上、より一層気を引き締めなければならない。
例えば満員電車で登校中……そう、特にこんな相手の前では。
膝上どころか股下数cmのスカート
学校指定のカバンには校則全無視のキーホルダー。
自信に満ちた背筋。
自分の魅力を最大限自覚している表情。
誰が見てもそれとわかる、スクールカーストトップ女子。
真面目な僕とは一生関わらないだろう人種。
「すみません♪ 何度もぶつかってしまって♪ 大丈夫ですかぁ♪」
……そのはず、だったのに。
猫撫で声が僕の耳をくすぐった。
かすかに当たる柔らかな感触。
ふわりと漂う甘い香り
そして……こちらだけに向けられたあざとい微笑みに、僕の鼓動は握られた。
「……ね♪ 隣のクラスの生徒会長さん、ですよね♪」
「お願いがあるんですけどお……♪」
「次の駅まで こうしてぇ……♪
寄りかかっていても♪ いいですか♪」
だめだ 危険だ
こんな女にだけは、気を許しては……
……だめ、なのに。