くノ一、それは女の身にて忍びの道を歩む者。
時代の流れによりその役目を果たし、時代の流れの中に消えていった……かのように見えた。
だが、長い年月を経たこの時代において、いまだに忍びの血は絶えていなかった。
佳城市にある蔵神館という屋敷には4人の若者が住んでいた。
物心ついた時より草壁流忍道を学びし、次期当主候補の草壁鬼一と恵慈という双子の兄弟。
その2人に寄り添うように存在する、同じく草壁流忍道を学びしくノ一の、笹乃目雪那と名夜竹満月。
草壁流忍道にはかつてから定められていた掟があった。
草壁家の忍道を学んだ男子は、1人決められたくノ一をパートナーとし、育て上げなければならないというものだ。
そしてパートナーに選ばれたくの一は身も心もその草壁家の男子に捧げ、生涯かけて尽くさなければならなかった。
草壁の忍道使いの男子は、物心ついた時にはすでに手にクナイを握らされて育つ。
その修行開始の日より5000日が経過した日に、パートナーのくノ一を選定し、1ヶ月以内にくノ一忍法を授けなければならない。
すべてのくノ一忍法を授けた後、婚礼の儀を行わなければならない。
そしてそのパートナーとの間に、次世代を担う子供を作らなければならない。
草壁恵慈はその掟を嫌っていた。
人の運命を勝手に決められてしまうことに、強く反発していた。
だが彼のそんな思いをよそに、パートナーを選定しなければならない5000日目は目前にまで迫ってくる。