陰キャで“ゆううつ”な彼女との、ある夏の記録
「そのオナニー臭い精液であたしを独り占めできるとでも思った?
そんなことしなくたって、あたしも先輩も、ひとりぼっちなんだからさ」
北村伊織(きたむらいおり)。
僕にだけ厳しい後輩は自嘲気味に笑っていた。
僕と伊織ちゃんは契約を交わしている。
──伊織ちゃんの求めに、僕は応じなければならない。
──代わりに僕が求めたら、伊織も応じなければならない。
たとえそれが、性にまつわる薄暗いあれこれであったとしても。
思い立って始まった自主映画撮影。
台本も演出も結末もないままに、焼ける屋上から這い出でるように僕たちは撮影に赴く。
「ちゃんとエロく撮れよ、先輩。
そういうの得意でしょ?」