
牢獄塔。重罪を負った者を収容するための場所。
ここでの自分の仕事は『一国の皇太子を誘惑した罪』で捕えられた囚人の見張りだった。
その囚人の牢獄に近づくにつれて、息遣いが届き、やがて扉越しに声が聞こえてきた。
「あなた……、ふふっ、今までの見張りじゃない、新しい看守の人ね…」
扉は頑丈な木で作られ、その姿は見えない。
重罪を負っていようとも、牢獄の中にいるなら脅威ではないはずだが、その囚人、彼女の言葉にはどこか人を引き付ける魔力があった…。
「見へ…?このおくひ……」
「なかはずーっととろっとろで…、あったはいのよ……?」
彼女が自身の素性を明かした時、吐息はなまめかしいものに変わった。
ちょうど腰の位置にある格子付きの窓からは、彼女の口が舌を伸ばしながら開いている……。
