私が生まれたとき、世界はすでに歪んでいた。
十数年前から、男性の出生率は急激に低下し、やがて“男”はほとんど生まれなくなった。
わずかに存在する男たちは「個人」ではなく、国家や貴族が奪い合う“資源”へと変わっていった。
ある国は、わずかに生まれた男を厳重に管理し、王族や貴族のみがその遺伝子を継ぐ閉ざされた社会を築いた。
ある国は、男を商品とし、売買を合法化。最も高値で取引されるのは、繁殖能力の高い男だった。
男を巡る争奪戦は日に日に増してゆく…
人類社会は国家同士の均衡を失い、混沌の時代が幕を開けた——。
これは、世界の闇に戦うひとりの少女の物語。