彼女は、落とし物を探している。
どこか異郷の薫り漂う町、深野市――
そこは、かつてヒトとヒトならざる者、妖異たちがともに暮らした幽玄の地であった。
ゆえに、深野は不思議な者たちの不思議な話に満ちている。
神掛 由岐奈(かみかけ・ゆきな)は、友人とともに
再び、この地を訪れた。
出逢ったのは、魔法使いを名乗る少年、
つまりは僕だ。
むかしむかしの大昔、外つ国から来た魔法使いがいたらしく、
夜羽 睦季(よはね・むつき)は、その後裔を拝している。
水晶石 みだり(すいしょうせき・―)は、ヒトならざる者。
淫魔にとっては死に至る病、恋に落ちてしまう。
猫天宮 花子(ねこてんぐう・はなこ)は、かつて水神に仕えた御使い。
いわゆるトイレの花子さんで、学園内の噂ならなんでも知っている。
小伯 白(こはく・しろ)は、いつでも味方でいてくれる。
魔法も妖異もなんにもわかっていないが、僕にとっては姉のような存在だ。
魔法使いの御役目とは、そんな妖異たちが起こす不思議な事件を解決し、
ヒトと妖異の間に調和をもたらすことにある。
だが、神掛 由岐奈は、僕以上の霊力を持ち、
生まれつき妖異の姿を見ることができる、鬼見の力まで持っていた。
そんな彼女は、落とし物を探している。
彼女と関わることで、
やがて僕自身が魔法に関わるきっかけとなった事件まで
掘り起こされていく。
それはヒトと妖異と魔法使いが織りなす、
長くて短い、一夏のおとぎ話――
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