――コスモスの花は、まだ咲かない。
新学期。転入という形で麻保志学園へとやってきた少年――匂坂秋人。
慣れない校舎を歩くうち、迷子となってしまった彼に声をかけたのは。
「それじゃあ、正門まで案内してあげるね。ほら、私も帰るところだから。ね?」
優しい瞳で笑う少女――永瀬優希。
学園を案内してくれる彼女に連れられ着いた場所は、蕾を一面に巡らせた花畑だった。
「ごめんね、まだ蕾のままだった」
「その花が咲いたら、二人でまた……」
優希は苦笑いを浮かべて告げた。
咲かない花畑で次の約束と、新たな学園生活の始まりを。
――これは花になりたいと願った、魔法使いの恋。