2061年7月10日、日曜日。千葉県鳴山市。
主人公・月見里ソラ(やまなしそら)は、ありもののパーツを繋ぎあわせてラジオを再開発した。
「……間に合った」
人工鳩が電波を喰うようになってちょうど15年目のその日。
父親が遺した固定型無線機で、ソラはラジオ放送を始めた。
慣れない放送が始まった翌日、ラジオが不思議な放送を受信する。
「–8月1日のオオゾラ落下事故の続報です。
第1ターミナル跡地で死亡したのは、月見里ソラさん。
その他、鳴山公空学園でも怪我人が出ています」
それは、未来からのラジオ放送だった。
「3週間後に……おれが、死ぬ……?」
放送を聞いたソラは15年振りに、鳴山空港第1ターミナル跡地に足を踏み入れる。
かつては日本の玄関口だった場所。そして、ソラが両親を失った場所。
その建物は朽ち果て、かつての威厳を失い、無数の人工鳩の巣になっていた。
そこでソラは、銀髪の少女に出会う。
指にとまった人工鳩の頭を撫でながら、少女はまっすぐにソラを見据える。
「……キミは、死なないよ」
呆然とするソラに、少女は静かに伝えた。
「わたしが、そう決めたから」
「ソラに……。あなたに、笑って空を見上げてほしいから」
こうして、月見里ソラと葉月かぐやは出会った。