晴れやかな夏休み――。
祖父が体調を崩したとの連絡を受けた。
俺は若干のめんどくささを感じながらも、忙しい両親に代わり、
一人息子である自分が、爺さんを手伝うため、祖父母の家に泊まりに来ていた。
幸いにも祖父の容態は大したことはなく、ひさしぶりに再会した祖母と
ゆっくりとした時間を過ごしていた。
そんな中、ここの自然はもう少しでなくなるのだと婆さんは言う。
この場所の後継ぎがいなくなると、都市開発のため取り壊されてしまうそうだ。
その時は「まぁそれも時代の流れか」そう思っていた――。
揺れる風鈴の音を頼りに縁側へと赴くとそこは、
静かで緑が気持ちの良い場所だった。
夏にもかかわらず風は涼しく澄んでいて、耳を澄ませば葉が擦れる心地のいい音。
「風が……心地いいですよね」
気づけば隣にはやわらかな日差しに包まれた小さな女の子の姿。
そしてなびかせる綺麗な髪は、立派に山を作り、耳を作っていた――。
俺は……目の前でほほ笑む少女とその自然の囁きに、いつの間にか魅了されていた。
無邪気で好奇心旺盛な白狐と世話焼きでおとなしい狐。
こうして俺たちの小さな恋物語は始まった。