『乃木坂翔』は『私立朱鷺坂学園』に通っている、ごくごく平凡な学生だ。
そんな彼が日曜日にも関わらず、妹の『咲姫』と共に学校に向かっているのには理由がある。
それは、人数合わせで所属している『オカルト研究会』の会長であり、幼馴染みでもある『泉岳寺摩耶』が、
ある魔術的儀式を行うと聞いたからだ。
特に呼集をかけられたわけでもなく、なによりオカルトに大した興味もない翔だったが、
メンバーなんだから手伝いに行くべきだと咲姫にせがまれ、こうして学校に向かっていた。
日曜ということもあって静まり返った校門に辿り着くと、そこには黒髪の少女が待っていた。
同じくオカ研メンバーにして咲姫の大親友である『赤羽明夢美』も呼び出されていたらしい。
挨拶もそこそこに連れだって行ってしまう咲姫たちを追いかけようとするが、
デジカメを構えたひとりの少女――報道部所属の先輩、『虎ノ門京子』が目の前に立ち塞がる。
なにかと騒動を起こすオカ研をマークしていた彼女もまた、儀式の噂を聞きつけたのだ。
今日こそ取材させてもらうと息巻く京子と共に、部室である図書室に向かおうとした、その時。
微かな振動が後舎を震わせたかと思うと、次の瞬間、凄まじい揺れがふたりに襲いかかった。
地の底から噴出する耳を劈くような轟音に揉まれながら、翔は意識を失ってしまう。
一体どれぐらいの時間が経ったのか。ようやく意識を取り戻した翔が見たのは、
まるで地震など無かったかのように静まり返る見慣れた廊下だった。
しかしほどなく彼らは知ることになる。
自分たちがある事件に巻き込まれてしまったことに。
校門の向こうに、地平線の彼方まで砂漠を広がっていることに……。